読了 朱川湊人『かたみ歌』かたみ歌 (新潮文庫)作者: 朱川湊人出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2008/01/29メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 19回この商品を含むブログ (61件) を見る

下町を舞台に、昭和の香りを漂わせながら展開される、不可思議な短編連作。
登場する人物が、各作品の中で少しずつ接点を持ちながら、それぞれに味のある
物語となっていく。強盗殺人のあったラーメン屋をじっと見つめる人物、古本に
はさまれた栞を介した、何十年も前に生きた人との交流、死ぬ人の身につける朱鷺
色の品々を見ることのできる若者・・・それぞれが「怖い」話なのに、不思議にも
「怖さ」よりも、人の情に眼が行ってしまうのは、作者の描き方なのだろう。
それぞれの作品に出てくる小道具も面白い。「忍者部隊月光」の面子から、昔懐かしい
謡曲と昭和40年代のころの空気が伝わってくる。
話に出てくる言葉から想像すると、田端、日暮里あたりの様子なのだろうか?
ちと散歩に出かけたくなった。