追悼ガリー・ベルティーニ♪

UCHOTEN

東京芸術劇場での都響演奏会であった。スティーヴン・スローン指揮によるショスタコーヴィチ2曲のプログラムだったが、喜歌劇ということでか『モスクワ=チェリョームシキ』組曲は演奏中止となり、交響曲第8番ハ短調 op.651曲となった。スローン自身ベルティーニに指揮を習ったということで、演奏会中終始、スローンは神妙な面持ちで演奏に没頭した。それぞれの楽章の終わりでは、かなり長い時間指揮する手を挙げたままにするなど、思いをこめた指揮ぶりであった。団員も難しい8番を夢中で演奏していた感がある。3楽章のビオラの出だしは素晴らしく感動的であった。ベルティーニといえば、昨年5月にマーラー交響曲第8番「千人の交響曲」とベートーヴェンの「運命」ハイドンの「告別」を聴いたのを思い出す。マーラー指揮者として有名なベルティーニの「千人の交響曲」はCDでも聴いていたが、まさに目の前で熱狂的に指揮をする姿を見ながらであったので感動もひとしおだった。それから1週間後には都響音楽監督を終えるという最後の演奏会で聴いた「運命」、その時の記録には「テンポが明確に示され、生き生きとした速さで心地よく音楽の中に身をおくことが出来た、4楽章の圧倒されんばかりの迫力はすさまじくたたみこむようにコーダに向かうその流れはただただ一聴衆として身をおくしかなかった・・」と書いてある。マーラーベートーヴェンもあの小さな体でよくあそこまでの迫力が出せたと感心した。そんな熱血ベルティーニは、ハイドンの「告別」では、楽員それぞれに譜面台の上に蝋燭型のライトを用意し、一人一人消しながらステージを後にさせ、最後には真っ暗になってしまうという心憎い演出も見せる粋な指揮者でもあった。あれからほぼ1年になろうとしているが、あれがベルティーニ最後の日本での演奏だったのだなあと思うと感慨深い。演奏後のロビーにはベルティーニの写真と白い献花が飾られていた。ご冥福を祈る。