プログラム

井上道義 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団 すみだトリフォニーホール
ソプラノ:森 麻季(S)鈴木 准(T)久保田真澄(B)成城合唱団
ヘンデル オペラ「セルセ」より「オン・ブラ・マイ・フ」
ヘンデル オペラ「リナルド」より「涙の流れるままに」
井上道義 メモリーコンクリート
グノー  聖チェチーリア荘厳ミサ曲
森麻季の歌声はすばらしかった。透き通ってクリアな声はしみわたってくる感じでこちらまで届いてくる。今日は張り込んでステージから9列目と、反響した声より生の声がじかに聴こえる位置であることも、きれいな歌声を堪能できる好条件だったかも・・・また、森の歌声を支える新日本フィルの弦も良かった。とくにチェロ、コントラバスがソプラノとのコントラストをしっかり演出し幅広い音の空間を創り出していたように感じた。森の歌声もさることながら、丁寧に感情をたっぷり込めた歌いっぷりは、聴き手にそれぞれの歌にこめられた作曲家の思いをもしっかり伝えてくれ、図らずも2曲目では感極まって目頭を熱くして知しまった・・・うるうる・・・モーツアルトのモテットは聞き逃してしまったが、この2曲もすばらしかったので満足。
井上のメモリーコンクリートは、以前の新日本フィルの定期でもあったが聴けなかった曲。現代曲というイメージが強かったのだが、プログラムの解説を読んでこの曲を受け入れる心構えをもって聴けた。この曲は井上の誕生から今まで生きてきた間の記憶を音で綴るものであるらしい。曲には電話の音や、校歌など、人の記憶の中にある音、曲がちりばめられなかなか面白かった。確かに自分の過去を振り返ってもその時々に記憶に残る音がある。そんなことを考えながら聴くと共感できた。
休憩をはさんで最終曲グノーの荘厳ミサである。この曲は始めて聴く曲でメゾソプラノを除いた独唱と合唱による壮大なミサ曲である。曲は確かに荘厳で華々しい曲想なのだが、どうもところどころに単調な感じを受け名曲とまではなりきれないものを感じた。テノール、ソプラノ、バスを一緒に歌わせる場面が目立ち、それぞれの良さを十分引き出せてないと思うところがまず第1印象としてキリエを聴いてしまったからか。演奏についてまた一言言わせてもらえば、バックの合唱団はいわば成城学園にちなんだ方々による編成による素人合唱団であり、口を見ているとややずれて歌っている方がいたり、独唱者とのバランスまで十分な配慮が行き届かないことも感じもうひとつな感じがしてしまった原因かと思われる。
自分も一昨年合唱団に参加してモーツアルトのレクイエムを歌っているので、第1に歌いきることを目標にしているため、なかなか全体のバランスまで行き届かないのを体験しているので良くわかるのだが、その点が残念であったことは確かである。また、テノール、バスともにすばらしい声であったが、独唱者3人が歌いあうところではソプラノを圧倒してしまう歌い方になっていたように思えたのも森麻季を聴きに入った者にとって残念であった。もっと森のきれいな声を聴かせてよ・・・って思いながら聴いていた。
でも、森麻季の生の声を聴けた初めての日であったことの喜びを感じながら帰途についた。