常設展無料日

西洋美術館は第2、第4土曜日に常設展が無料である。先々週この恩恵を預かってきたばかりだが、今日も暖かなので出かけてきた。
いつもじっくり見る作品以外も目を引いた作品をぼんやり眺めて目の保養をした。
今日気になった作品・・
■フィリップ・ド・シャンパーニュ
フランスのお抱え画家シャンパーニュの「マグダラのマリア」油彩、キャンバス
マグダラのマリアは、聖母マリアではなく娼婦だと言われてきたという。(その後ヴァチカンは罪深い女性を否定)その彼女は後に敬虔な信者となり、キリストの死後体に油を塗り。自らの髪で拭いたという。
薄暗い室内で、十字架を背に聖書を置き、遠く天を仰ぎ祈りを捧げている様子は、じつに清らかである。口はやや開いているので祈りの言葉を口ずさんでいるのだろう。煩悩を捨てきった、まさに純粋な心が絵から伝わってくる。恨みやねたみ嫉みは微塵もない、見ているだけで心が洗われるかのような作品である。
エル・グレコ
「十字架のキリスト」油彩 キャンバス
暗い背景にのなかに浮び出ているキリスト磔刑の図であるが、そこには悲しみではなく、慈悲そのものが描かれている。キリストの白と黒い背景のコントラストが、実にうまくキリストの慈愛そのものを浮き出しているようだ。
■フセーペー・デ・リベラ「哲学者クラーテス」油彩 キャンバス
クラーテスはギリシャの哲学者だ。彼は実に凛としていて叡智がにじみ出ている。手に持つ書物も学者然たる風格をかもし出している。実際の様相は醜かったというが、この作品では実に堂々たる老人として描かれている。こんな風に年を重ねたいなとしみじみ思った。
■イサーク・ファン・オスターデ
「宿屋の前の旅人たち」油彩 板 1645年
長旅で疲れた旅人が、古めかしい田舎の宿屋に今到着したという様子が描かれている。宿屋の傍の水辺で旅で汚れ、疲れきった足を浸ける旅人、背景は夕暮れの、今まさに夕暮れになろうとする色合いを上手く表現している。時間がそこでぴたりと止まったままの、のんびりとした気持ちを味わうことが出来た。
■アリ・シェフェール
「戦いの中、聖母の加護を願うギリシャの乙女たち」油彩 キャンバス 1826年
戦いの最中、いまや敵兵が襲いかかろうという緊迫した中に、必死に洞窟の中の聖母に祈りを捧げる乙女たちの悲しさ。戦う男よりも、逃げ惑う女たちの悲壮な姿が一人ひとりの娘の表情から伝わってくる。女たちの健気さがかえって物悲しさを物語っている。

西洋美術館を出たところで、草木の匂いがかすかにした。春らしさが日一日と感じられるようになったなぁ・・と思ったところで、帰りに盆栽を見ていこうと根津方面へ。
清水坂の茶房「さえら」で、これまた2週間ぶりのプディングを食べに寄った後、上野グリーンクラブへ・・・
今日は、またにぎやかだった。春らしい草花がひしめき合い、のんびりかわいい盆栽を見て廻る。こんな小さな梅や桜にも花がついているんだなぁと感慨もひとしお。生きている草木、まさに春をいっぱい感じあっているようで、並んで誇らしげに葉を風に揺らす姿にしばし時を忘れ見入ってしまった。
のんびりとした春の散歩であった。満足満足・・・