読了

山本周五郎『小説日本婦道記』

小説日本婦道記 (新潮文庫)

小説日本婦道記 (新潮文庫)

この作品集は戦中に書かれた30数編から作者自らが選んだ珠玉の短編集である。どれをとっても、生き方を学ぶに値する話であった。作品は妻たるもののあるべき姿として描きつつ、人としての良き生き方とは何かを語っている。当時の婦人観、時代背景の中で書かれたものには違いないが、作者自身も語っているように、婦人の権利や自由を制限するという意図は無く、人への思いやり、感謝、献身等々、現代社会が置き去りにしてしている道徳律の根源について作者は語っている。頑固だったという周五郎が、直木賞を辞退した作品として名を残すこの作品だが、何度も読み返したいと思う作品に久々に出会ったような気がした。