ヒラリー・ハーン♪♪

今年も行きました。ヒラリー・ハーンのリサイタル。
浜離宮朝日ホール2階の一番前の中央から右よりの席。ここはピアニストとハーンが並んで見える好位置。
曲目は
イザイ 無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番
エネスコ ヴァイオリンソナタ第3番
ミルシュテイン ヴァイオリンのためのパガニアーナ
モーツアルト ヴァイオリンソナタ第25番
ベートーヴェン ヴァイオリンソナタ第3番
まずは、イザイの無伴奏でその新感覚の美をたっぷり披露。現代風なので難解であっても、ハーンの奏でる
ヴァイオリンからは、不思議な感覚の美的センスが感じられる。特に2楽章のフガートからは、バッハの霊感に
触発されて作曲したという感覚がじかに伝わってきた。イザイもハーンで聴くとなかなか良し。
エネスコのルーマニア民族風と題された3番も、難解さの中に情熱的で民族的な色合いが乙な作品。
ここでも、ハーンが弾いているからこそ感じられる気品も味わうことができたように思う。
この2曲で魅せるハーンの技巧のすばらしさは、言葉では言い表せない。繊細で大胆で、様々な色の変化が
波のように押し寄せてくる。
休憩では協賛のキューピー社からサンドイッチとスープが振舞われ、粋な計らいに驚いた。
後半は時代を遡り、パガニーニの変奏曲とモーツアルトベートーヴェンでハーンの音楽性を堪能。
モーツアルトの25番はCDで何度も聴いていたし、昨年のリサイタルでも聴いていたが、今夜の25番も良かった。
モーツアルトのヴァイオリンソナタは、ヴァイオリンとピアノの会話を聴いているようで、そのかけあいが今日の
ピアニストのイム・ヒョスンと実に上手くされていた。聴いていて実に楽しかった。
ベートーヴェンソナタは、逆にピアノとヴァイオリンが一体になって音楽になっている。まるでピアノを弾く
右手と左手の関係であって、両者の音楽性があっていないとちぐはぐになりそうだが、こちらも実に意気があっていて
二つが見事に一体化していた。そうなってはじめてベートーヴェンのヴァイオリンソナタはやはり「かっこいい」。
ハーンは、弾いている様子も実にまじめで、見事なまでに正直だ。それが一番の魅力だと思う。
演奏後の挨拶も、立ち居振る舞いもしかりである。それが基調になっている上で、作曲家の音楽をしっかりと自分の中で
昇華させ、自らの音楽として聴衆に聴かせる。
技巧は天才肌でも、感性は実に謹厳実直な人間性で一生懸命音楽として表現する。そんな演奏が聴かせてくれるハーンが好きだ。
演奏後の拍手も、聴衆の思いが込められていて会場全体がひとつになっていた。
アンコールはアルベニスのタンゴとプロコフィエフの3つのオレンジの恋からマーチ・・・どちらも、日本語で言ってくれる。
特に今日の言葉は今まで以上に長く、去年より上達しているなぁと、そんなところにも感激した。
今日のいでたちはオレンジをベースにしたもので、よく見ると素朴な感じの花がらが刺繍されていた。ハーンのそんな趣味にも
センスの良さを感じている。
あぁ・・いい演奏会だった。満足満足・・・・