読了

静寂の叫び〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

静寂の叫び〈下〉 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

聴覚障害者を題材にしたサスペンスである。この本からは、ディーヴァーの巧みなストーリーテーリング
と、結末のどんでん返しから受けた小説の醍醐味もそうだが、聴覚障害の世界について考える機会が得られた
ことがまずもって大きな収穫だったような気がする。
手話による意思疎通には、視覚に頼らざるを得ず、対話しようとする相手が手話に気づかなければ会話が成立
しないなんて分かりきったことかもしれないが、話の中に出てくる状況の中から、その重要性にあらためて気づいた。
また、音声による言語を習得した後に聴覚を失う場合と、生まれながらにして聴覚を失っている場合における
言語活動についても、じつに興味深かった。
我々は通常、音声による言語活動を頭の中で行っているわけだが、一度も音声による言語を経験していない方
にとっては、どのような思考における言語が存在するのか。謎は深まるばかりである。
相手の立場に立って・・・とするには、まず相手の置かれている環境について深く知ることかも。