国立近代〜銀座

今日は子効率近代美術館が、月初めの無料観覧日であったので出向く。
なかなかいい作品に出会えて楽しかった。
■木島桜谷 「しぐれ」1907

この図の左にも枯れ草の中に遠のきつつある鹿を描いている屏風がある。
この作者「このしまおうこく」と読むのだそうだ。
冬枯れの大地に鹿の親子たちを描いた作品だが、不思議にひきつけられるものが
あった。鹿の間にある赤い葉をつけた草が実にいい塩梅でこの作品を引き締めている
様にも見え、またほんのり暖かさを感じる。
鹿の毛並みを実に鮮やかに描き、作者の暖かい視線がある。
鏑木清方「明治風俗十二ヶ月」九月から十二月の4点
9月「二百十日」強い風が木々を大きく揺らす中、二階の物干しに空模様を気にしながら
出ようとする婦人。
10月「長夜」年老いた母が火鉢で何かを炙り、母は宿題をやっている子どもの傍らに針仕事
をしている。時計は8時7分になろうとする中、静かな家庭の一こま
11月「平土間」平土間とは歌舞伎劇場で、1階正面の枡(ます)で仕切られた観客席。その席に
ある女性二人を描いているが、二人のしぐさに気品が感じられる。
12月「夜雪」寒さをしのぐため頭から布でまとった婦人が人力車に乗っている。車夫は暖かそうな
ひざ掛けを客にかけている風景
何気ない、日常の世界を切り取り清方の上品な構図で画面にぴったりはめ込んでいる。
日常でありながら、清方が描くとそこに気品が漂い、じっと見ていて飽きない。
藤田嗣治「パリ風景」1918
藤田のエコールドパリ時代の作品。雪模様の寒々しい丘の上の歩道を、ただ一人押し車を押す女性がいる。
木々に葉はなく、遠くの煙突からは黒い煙が流れている。
道はねずみ色の雪。そう、白ではなく寂しげな雪景色となっている。何をもってこのような暗鬱なパリ風景
を藤田は描いたのか。作品は藤田32歳のものである。陽気な藤田の裏側にある寂しさのようなものを感じてしまう。
この後、南米に旅たつのだが、原色の世界を前にしたモノトーンの世界がこの作品なのか。
藤田の女性を描いた作品にはない、一面が見え隠れして実に面白い。同年「巴里風景」という作品も残している
らしい(ブリヂストン美術館)この作品はいかなるものか?今度見てみたいものである。

■野田英夫「帰路」1935
前にも見ていた作品だが、今日はやたらこの作品が気になった。
野田はカリフォルニア生まれで日本とアメリカを行き来して作品を描いてきたらしい。
この作品には、何の脈絡もなく家、カーテン、花、腕組みをする人物、倒れた椅子、鉄の門扉などが描かれている。
帰途という言葉のイメージから、暮らしてきた中で見聞きしてきたさまざまな思い出が周りに配されているようにも
見え、中央の人物(作者)の心象かのように思えた。いやいや言葉では言い表せないが、ほかに何か作者の思い描く
こともあるように感じる。見る側にとっての捕らえ方が、見るものの数だけあるであろうこの作品には、またいつか
じっと見たくなるような不思議な力がある。

川合玉堂「彩雨」1940
山の上から引いてきた水で動く水車、右手には萱が朽ちかけている百姓家。雨の中二人の農婦が小脇に長ネギを抱え
家路に急ぐ風景。水車の規則的な音の奥に、色づき始めた木々に打ちかかる雨の音が重なっていそうな農村の一場面。

 先月飲み会をした折に忘れてしまったフランス語のテキストがあるかと
銀座のライオンに電話をしてみると、確かに預かっているとのこと。
かれこれ1ヶ月になるのに預かっていてくれるなんていい店である。
礼を言ってもらった後に、4丁目の山野楽器で欲しかったシャルル・ミュンシュ
指揮、ボストン交響楽団演奏のシューベルト「グレート」を購入。
ついに手に入れることができた。
LPで我慢しようと思ったけれど、買ってよかった。
今聴いているが、録音がクリアでミュンシュの演奏が生き生きと再現されている。
青春時代にこれを聴きわくわくしたのを思い出した。

http://www.hmv.co.jp/product/detail/1215194