読了40 今野 敏『隠蔽捜査』隠蔽捜査作者: 今野敏出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2005/09/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 11回この商品を含むブログ (49件) を見る

図書館でたまたま面白そうな題名と手にした本だが、2006年、第27回
吉川英治文学新人賞を受賞作であった。
読書の愉しみのひとつに、読み手が登場人物の心情を共有することが
あると思うが、本作では主人公の置かれた立場に自分を置き、共に悩み
苦しんだ。今年に入って自分にとってぴか一の作品に出会ったという感想
をもった。
世の中には、堅物、頑固・・・と主義主張を曲げないという変わり者扱い
される人々がいるが、主人公もそれに輪を掛けた偏屈な人物である。
その一途さゆえに、家庭を顧みることもなく、周囲からも怪訝そうに見られ
決して褒められたものではないのだが、彼の奥底にある正義感には正直まいった。
仕事上の問題と家庭内における問題が同時に起こり、「隠蔽」によって
乗り切ろうとすることの決断を迫られる。まさに、この部分の展開に読者で
ある自分も「自分ならどうするか」の選択を書き手に迫られるのである。
後半の展開は心打つものがあった。それは自分自身の経験した出来事と重ね
ながら読んでいたいたからかも知れないし、これからの自分が如何に生きるか
を問われているように思えたからかもしれない。それほどまでに自分に迫って
きた切実な問題として捉えられた作品であった。
この作品は多くの人に勧めたい。