読了47 京極夏彦『覗き小平次』覘き小平次 (C・NOVELS BIBLIOTHEQUE)作者: 京極夏彦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2005/02/01メディア: 新書 クリック: 5回この商品を含むブログ (60件) を見る

京極夏彦の作品は読んでみたくもあり、ためらいもありと今まで
手付かずだったが、山本周五郎賞作品をこのところ読んでいるので
受賞作である本作を手にした。
京極氏の文章はなかなか趣がある。同じ言葉でも漢字を変え、文字から来る
雰囲気を出すことにうまく成功している。文体も泉鏡花二葉亭四迷のような
文語調のくだりあり、歌舞伎調の言い回しありと実に凝っている。
本作では、登場人物がそれぞれの体験を語り継ぎながら、全体を構成する
もので、様々な角度からのカメラアングルによって読み手にイメージさせる
手法で、黒澤明の「羅生門」のようなつくりとなっている。読み物として
ひとつの物語を様々な視点から読者にイメージ化させることに見事に成功
しているといえよう。
お見事・・・実にすばらしい作品であった。