都響♪

都響プロムナードコンサート サントリーホール
指揮:ドリアン・ウィルソン
フルート:クレモン・デュフー
モーツァルト交響曲第36番「リンツハ長調 K.425
■ハチャトゥリャン:フルート協奏曲 ニ短調
レスピーギ:バレエ組曲シバの女王、ベルキス」
モーツアルト交響曲では40番や「ジュピター」より
プラハ」「リンツ」と都市の名前がついている2曲の方が好きだが、
コンサートではなかなかこの2曲とめぐり合えない。
ようやく今日「リンツ」を生で聴くことができた。
改めてこの曲の謂れを調べてみると面白い。モーツアルトリンツ
トゥーン伯爵の招きで伯爵家に滞在する間、伯爵に作曲を10月31日に依頼され
、11月4日のコンサートに間に合わせたというのだからすさまじい。今日の演奏でも
確認したが編成にはフルートが含まれず、伯爵のオーケストラにフルート奏者が不在だった
なんて話もある。
1楽章はAdagio - Allegro spiritosoと、冒頭には今までなかった序奏部があり、まさに
後期の交響曲群の始まりの曲でもある。何といってもこの曲の魅力は序奏部が終わったあとの
テーマと展開に気品が感じられるところだろう。要所要所をオーボエがアクセントをつけて
いるところも実にチャーミングである。そして4楽章の煌びやかなPresto、コーダは繰り返し
聴いても飽きのこない完成度。今日の演奏では、多少1楽章の弦楽器のアクセントが強めかな
と感じたが、この曲のよさを十分引き出して誠に優美な演奏となっていた。
2曲目のハチャトリアンの原曲はヴァイオリン協奏曲である。ランパルが作曲者の了解を得て
フルートを独奏楽器として再編成した曲なので、当然ヴァイオリンの重音は単音に置き換えられる
ことになった。しかし、今日の演奏ではデュフーの技巧でヴァイオリン協奏曲とはまた違った
よさを表現できていたように思う。実は1楽章ではフルートがオーケストラに負けているような
感があったが、それ以降の楽章ではしっかりとフルートが自己主張をして、フルートの味わいを
十分に発揮していた。特に2楽章の叙情的な旋律はフルートの音色が実に快く響き、ランパル
この旋律を吹きたいがためにヴァイオリン協奏曲をフルート版にしたのかと思えた。
最終楽章では民俗音楽風の主題を、明らかにヴァイオリンの奏法からでは表現できないフルート
の独自性を発揮してのびのびと演奏していた。さすが近年注目されている天才フルート奏者だと
感心する。
最後のレスピーギは初めて聴いた曲だが、ローマ三部作のオリエンタル版のような作品であった。
初演には1000人規模の大編成バレエ公演だったのだが、大編成ゆえに再演が難しく作曲者が
演奏会用に4曲に絞って作品としたらしい。本来の演奏と違えて2曲目と3曲目を入れ替えて演奏
されることが多いとのこと。緩除楽章が連続しないようにということらしいが、今日も演奏順が
変更されていた。4曲目はまさに「アッピア街道の松」を髣髴とさせる迫力で「おお、レスピーギ
という曲であった。
なかなか面白い選曲のコンサートで楽しめた。