ベートーヴェン ピアノソナタ3

28歳の頃の作品103曲。
3曲中2曲は最初期の4楽章から3楽章になっているが
5番では3楽章に相当するメヌエット、6番では緩除楽章が割愛
されている形となっていて、古典的な作風に戻ったようでもない。
4番までのダイナミックな編成から、やや小規模なものになっている。
◆ピアノ・ソナタ第5番 ハ短調 Op. 10 No. 1
ピアノ:マイケル・ヒューストン(5−7番)

ハ短調の何とも悲しげで力強い主題で始まる1楽章に比して、2楽章はとても美しい旋律
にあふれている。3楽章のコケティッシュなテーマはモーツアルト的な印象を受ける。
テーマを対話風に展開させるところも、どことなくモーツアルトっぽい。
◆ピアノ・ソナタ第6番 ヘ長調 Op. 10 No. 2
主題は明快でいいのだが、展開がどうもぎこちない感じがしてしまう。いろいろな旋律を
つなぎ合わせたかのよな印象があって1楽章はまとまりに欠けるのが難点か・・
2楽章も自由な構成なのかいまひとつつかみ所がない。3楽章は変奏曲風で単一主題を展開
させていくため古典的風な趣に満ちている。自分はこんなベートーヴェンも面白く繰り返し
聞いてしまう。意外といける・・・
◆ピアノ・ソナタ第7番 ニ長調 Op. 10 No. 3
第1楽章は「かめだのあられー♪」のような順次下行ではじまり、何事かと思いきやなんともはかなげな主題が
聞こえてくる。このあたりが渋い。次第に力強さを増し華々しく終結する。第2楽章は楽章表示に「ゆっくりと
悲哀に満ちた」とある通りそこはかとなく暗い・・・これ以上の苦しみは無いような中で第2主題が重い低音部
の上に荘厳に奏でられる。この曲の中で一番の長さで、気がめいったときには最後まで聞けないかもしれない。
この3曲の中で一番素敵な旋律かと思う。恋にときめくような愛らしさ。中間部には低音を高温がカノン風に
追いかけるのもなかなかいい。第4楽章は何かを問い、それに応えるようなやり取りで自由な
展開を見せる。一番のお気に入りは最後に左手がリズムを刻む中、右手が一人舞台で縦横無尽に駆け回って
終わる部分である。