ベートーヴェン ピアノソナタ4

◆ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 「悲愴」 Op. 13
ピアノ:フレディ・ケンプ

昨夜はブレンデルで聴いた8番だが、今日はケンプの息子フレディの
版をじっくり聴く。この曲の持つ叙情性をよく出している。なかなかの
名演だと思う。1楽章の不安のよぎる序奏から第2楽章の生き生きとした展開は
なかなかいい。この曲についている「悲愴」という題名は、自身では命名をしかかった
ベートーヴェンには珍しいという。ピアノソナタでは他に「告別」があるようだが、
それだけにこの曲の曲想に深い意味があるようにも思える。
「悲愴」を辞書で引くと「悲しく痛ましいこと」とあるが、ベートーヴェンの周囲で
この頃何があったのか?興味深い・・・2楽章は「のだめ」で慎一とのだめが初めに
出会う場面で流れていた曲で有名だが、やはり何度聴いても美しい・・
第3楽章は昔、上田知華とカリョービンの曲にも引用されていたのを思い出す。
何となく主題は日本の歌曲のような曲風だが、何ともいえない可憐な響きで好きな楽章
である。
この8番は、今までの作品と大きく違って聞こえる。ベートーヴェンの人間味がよく
現れていて、古典的な作風と一線を画している。また、曲全体に無駄を感じない。
それだけに、いろいろなピアニストがそれぞれ個性を発揮していて、聴き比べるだけ
楽しみが増す。うーんいい曲だ♪
◆ピアノ・ソナタ第9番 ホ短調 Op. 14 No. 1
ピアノ:アンドリュー・ランゲル

8番「悲愴」と同じ頃の作品とは思えない、軽妙な曲想で、まずもって4声の掛け合い
がまるで室内楽のような印象を与える。調べてみたら、3年後に弦楽四重奏に編曲されていた。
http://ml.naxos.jp/work/144501
http://ml.naxos.jp/work/349870
2楽章はドイツ的なロマンティックな旋律と何となくオリエンタルな風情のある旋律が
混ざり合って不思議な印象である。
3楽章もどことなく実験的な自由な構成で、中間部にある転調を繰り返すあたりが面白いが
はてさて・・・どうもとりとめなく終わってしまう感じは否めない。8番の無駄の無い
まとまりに比べるとどうも消化不良だ・・・弦楽四重奏の方が感じがいいかな
◆ピアノ・ソナタ第10番 ト長調 Op. 14 No. 2
ピアノ:アニー・フィッシャー

「これ、モーツアルトだよ」と言われてもわからないような、愛らしい曲である。
右手の高音はコロラテューラが歌うような旋律で気に入っている。
1楽章でモーツアルトと勘違いこそすれ、2楽章は「やっぱりベートーヴェン」と
ばれてしまうだろう。行進曲曲風だがいかにもドイツって感じがしてくる。それでも
1楽章同様のどかな田園風景が背景に見えているようなのどかな感じがする。
3楽章は、初めのあたりで強い調子で同じ和音を3度繰り返すのはどうもいただけないが、
小さな子どもがかくれんぼをしているような可愛らしい旋律は楽しい。
アニー・フィッシャーのピアノは華やかで、上品に聞こえこの曲にはぴったりの演奏。