プログラム

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調op.64
ブルックナー交響曲第6番イ長調WAB.106
庄司のヴァイオリンはなかなかの感性が感じられた。ヴァイオリンを肩より前に傾けて持ち方で、弓は当然のことながら低い弦になればほぼ垂直になるという独特な持ち方は別として、高い音では目を閉じ、眉を寄せて体全体から堂々とヴァイオリンを奏でる姿は、若さを超えたキャリア、技量を感じた。その庄司のメンデルスゾーンは、安心して聴けるしっかりとした演奏で、バックのオーケストラもとても丁寧に独奏ヴァイオリンを引き立てていた。
オーケストラの団員は、チェロの半数が女性で驚いたが、それより第1ヴァイオリンの第2プルトにかなり高齢と思われる女性がいたこと、そしてその女性が激しい部分でも他のヴァイオリンと一糸乱れず弾きこなすかなりの腕前であることも印象に残った。
指揮者のケント・ナガノは若かりし時の小澤征二を髣髴とさせる髪型で、全体的には知的な感じにオーケストラを巧みに操る指揮振りであった。熱すぎず、冷ややかでもなく落ち着いて全体のバランスをうまくとっていた感があった。
庄司は演奏後万来の拍手に応えパガニーニカプリース17番をアンコールとして披露。
その技巧のすばらしさに更なる拍手が贈られた。
2曲目のブルックナー交響曲第6番。前回もブルックナーの曲に対して、その難点を指摘したのだが、あれから愛用のiPod shuffleに0番から9番までを録音し、頻繁にブルックナーを耳にすることに勤めてきたのだが、6番の1楽章のやや泥臭い主題や4楽章の度重なる音楽を高揚させては止まる苛立たしさに辟易しながらも、2楽章のアダージョや3楽章の独創的な展開は評価するようになってきた。特に今回は「ん?」と思いながらも、オーケストラの弦、金管の圧倒的な迫力には心を奪われ、身を乗り出して聞き入ることができた。
6番は特にブルックナーの持ち味であり、自分のあまり好まない(というよりつまらないなと思うの方が合っているのか?)「オルガン的な和声」がステージのオーケストラの演奏を見ていて強く感じた。金管全体が主題を高らかに奏で、弦もそろって和音を奏でる。目をつぶれば「おお、オルガンの響きそっくりじゃないか・・」という部分である。当日のプログラムには4番と比べて、全体に明るくまとまっている作品のような論評もあったが、自分は4番の方が、テーマ、展開ともによくできていると思っている。この、部分部分に迫力のある6番の交響曲をもケント・ナガノは冷静に指揮をしているという印象を受けた。演奏後の会場全体からの賞賛にも、実にスマートに応えていて好感が持てた。