プログラム1

ピアノ:仲道郁代
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番嬰ハ短調「月光」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番ヘ短調「熱情」
なんとすばらしい演奏であったのだろう。このプログラムは前から4列目と良い席に巡り合い美形の仲道郁代嬢の演奏を間近で見、聴くことができた。颯爽と登場するや否や会場を瞬く間に月明かりの世界へ引き込んだ。表情からも感情をたっぷり込め、ベートーベンと一体になっていた。特に月光の2楽章の艶やかな演奏は圧巻であった。また、熱情でも、1楽章からの激しいフレーズで観客を魅了しつつ、さらに最終楽章のクライマックスまで、高まる情感を維持しながらの熱のこもった演奏に万感の思いで拍手をした。仲道嬢がピアノを弾くときには口で言葉を発しているような仕草が見られた。グレン・グールドのように奏でる音と別の音が演奏者の脳裏に流れているかのようであった。これも間近で演奏を聴くことができたおかげで得た発見であった。