プログラム

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調K.376
J.S.バッハ無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 ハ長調 BWV1005
モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調K.306
フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 op.13
ハーンのモーツアルトは始めて耳にしたが、モーツアルトがこの曲にこめた思いをハーンは聴衆にそのまま伝えてくれていたと思う。実に自然体としてモーツアルトがそのまま客席に届いてきた。会場はまさに水を打った静けさであった。その雰囲気を感じながら、いいものは皆にしっかり伝わるものなのだなあと実感。ピアノのナタリー・シューとの相性も良かった。シューはハーンの動きからそのタイミングを計ることに徹し、ハーンの演奏をしっかりバックアップしていた。バッハも、最上級のテクニックで見事な演奏を聴かせてくれた。しかも、ハーンのバッハは、若いにもかかわらず堂々たるもので、バッハの持つ哀愁をヴァイオリンという楽器を通して見事に表現しているという感を強くもった。そこは、ハーンの音楽に対する思いそのものなのであって、バッハを、モーツアルトフォーレをハーン自身が解釈し、ハーン自身の音楽へと昇華させたものなのであろう。そこが、また若いのにすごいところなのだ。