上野の東京都美術館

院展は、まさに日本美術院の展覧会である。日本画をこんなにいっぺんに見たのは初めてであった。平山郁夫のオリエンタルな作品にひきつけられしばし眺むる。左右対称に昼と夜の砂漠風景、駱駝に乗った隊商は鏡に映したように対象的な構図。なかなかの妙味であった。
その他、多くの作品を見ながら日本画に取り込まれた写真的な構図、手法が強く印象に残った。描く人物は写真的な輪郭で、コラージュや写真でよく見られるフィルターを使った画像処理的な作品が多かった。日本画もそういう時代なのか、まるで西洋絵画におけるキュビズムのような風潮を感じた。中には日本画の伝統的な題材、自然、静物の描かれている作品もあるが、モチーフの多くは従来西洋絵画で取り上げられてきたものが多い。決して批判的に見ているのではないが、すべての作品を見て日本画とは何か、どこへ行こうとしているのかをしばし考えさせられた。なかなか面白い体験の出来た院展である。今後も院展を、日本画壇を気に留めていこうと思う。