N響でシベリウス

出かける前に、音楽の友社のホームページで今日のコンサート情報を調べてみたら、N響が15:00からと知り、いつもの飛び込み自由席1500円に行く。明治神宮前から歩いていくのも久しぶりだったが、天気も上々、さわやかな秋風の中NHKホールへ。
3階の右手がいつもの自由席の定位置と決めているので、陣取る。
指揮;ピンカス・スタインバーグ ヴァイオリン;スザンヌ・ホウ
シベリウス ヴァイオリン協奏曲
スザンヌ・ホウのヴァイオリンは素晴らしい技量であった。指揮者と独奏者、オーケストラがうまくかみ合った演奏であった。ただ、シベリウスのヴァイオリン協奏曲は、いまひとつ食指が動かないので、ふむふむ・・と演奏を聴いていた。この曲のいわれを見ると、作曲者自身も何度か書き直しているようで、初演を依頼しようとしていた当時の名ヴァイオリニストとの確執も生んでしまっていたようでもある。シベリウスの音楽は、根幹となる主題を変化させ、繰り返し、コーダへという古典的な作風というよりも、交響詩的な、いろいろな味が楽しめる料理的なイメージが強いのか、どうも協奏曲はしっくりこない。自分としてはシベリウスの作品としては完成度がいまひとつと思う。食わず嫌いなところもあるのかもと、帰宅後聴いてみる・・・
シベリウス 交響曲第2番
この曲を、こんなに感動して聴いたことはなかった。プログラムにあるこの曲に関するいわれを読みながら、聴いていた。ロシアの圧政に苦しむフィンランド人へ勇気を与えたようであるが、当時の政治的な背景やシベリウスの心情など、それらのコンテクと抜きにこの曲の持つ素晴らしさを肌で感じた。
1楽章から受ける冷たく肌をさす音色。それはまさに「寒色」の世界であり、青と白のコントラストだ。2楽章では、海の底を思わせる限りなく黒に近い濃紺から、光の差す流氷の下の海の鮮やかなブルー・・・3楽章のフィヨルドを駆け下りる急流の冷たい青と、流れ落ちた水がたどりついた静かな湖に広がる朝霧、そして暗雲立ち込めて迎える4楽章の抜けるような青空・・・そしてイメージは空高く舞い上がり眼下に雄大な北欧の自然を見下ろしていた・・・まさに青と白のコントラストをもってこの曲を聴くことで、深い感動を覚えた。
シベリウスは、政治的な背景については、周りの批評家とは違いほとんど口にしなかったという。この曲の背景にあったもの・・・それは実はこんなイメージだったのかも、シベリウスと二人だけの秘密にしておこうか思いながらNHKホールを後にした。