マーラー交響曲6番

17日に6番を聴きに行く予定である。そこで、6番についていろいろ調べているうちにこの曲がじつに面白く聴けるようになってきた。初演のときと2楽章、3楽章が入れ替わっていることや、4楽章に現れる英雄を打ちのめすハンマー音の回数が5回から2回と、楽譜の版を追うごとに少なくなっていることなど面白い。マーラーブルックナーは、曲によっては好き嫌いがはっきりしている作曲家なのであるが、いろいろ調べたりしていくうちに愛着がわいてくる曲があるのも一興である。
今、手元にはバーンスタインカラヤンショルティの版があるが、先日は図書館で8人の指揮者をさわりだけ聞き比べた。1楽章の出だし行進曲風のテーマでバーンスタインカラヤンがいい。4楽章の圧倒的な速さで引き込まれてしまったのがショルティ。この6番については初演の練習でマーラー自身が書き込んだ時間があるようなのだが、それによるショルティの4楽章は4分32秒も速い。(マーラーは32分としている)実際聴いていても、すさまじい!そして、最終章に2回登場するハンマー音。この音については「短くて鈍い、力強く、しかも重々しく打ち響く打音で。金属的ではない性質の音」と楽譜に記されている。果たしてその楽器は何であろう?床に金属板を敷いて、大きなハンマーで打つらしいのだが本当なのか?17日は是非そこにも注目したいのだが・・・
しかしこの交響曲は「悲劇的」と題されているが、マーラーの私生活では幸せの絶頂期にあったらしい。わが子を抱きしめたすぐ後にこの曲を執筆する神経は、なるほどマーラーだなという感じがする。この初演の後に本当の悲劇がマーラーを矢継ぎ早に襲う。子どもの死、心臓病の発覚、ウィーン歌劇場の解雇。英雄を打ちのめすために3回ハンマーが振り下ろされる、その3回目のハンマーを削除していたにもかかわらずマーラーは悲劇に直面する。皮肉な作品である。
ところで、3楽章は実に美しいメロディであるが、最後のほうに映画音楽を思わせるような、すばらしい盛り上がりの場面がある。そこを聴くたびに、絶頂期にあるマーラーが未来を予感し、悲劇の中にある自分を投影して、過去の栄光を懐かしんでいるように聴こえてならない。じつに神々しいまでの美しい旋律である♪
(参考;『マーラー交響曲』金子建志 音楽の友社 を読んでいろいろわかりました、おもしろい本です。副題が「こだわり派のための名曲徹底分析」っていうのですから・・・)