ハルトマン「葬送協奏曲」

「アンチ・ファシズム」という副題の第2次大戦に向かう騒乱の時期に作曲されたものである。アダージョでは、灰色と黒の世界がイメージされた。ファウストがこの曲を是非演奏したいと思う気持ちが伝わってくる、緊迫感に覆われた力のこもった演奏であった。
昔、現代曲で何をイメージするのか悶々としていた時、コンクリートで覆われた廃墟が映像で流れる中、バックに聴こえる現代曲が実にうまくはまり、これだ!と思ったことがある。現代曲にはメロディで聴かせるより、聴衆にイメージ化させるものもあるのだとわかってから、難しい曲ではその曲から受けるイメージを大事にしたいと考えて聴いている。この曲でも、まさに戦争へ向かう暗澹たる世界がイメージできたし、戦争の大きなうねりの中での人間の非力さを感じた。
アンコールには、バッハの無伴奏ソナタ3番を演奏されたが、演奏もさることながら実に素晴らしい音色であった。プロフィールを改めて見るとストラディバリウスとのこと。なるほどである。そういえば、ファウスト女史の挨拶では、必ずヴァイオリンを上に掲げる仕草があった。これにも、なるほどであった。