ベートヴェン 3番「英雄」

 変ホ長調は英雄の調といわれているらしい。R・シュトラウスの「英雄の生涯」もそうらしいのだ。指揮棒が振り下ろされた瞬間から、自分の体にあるカール・ベームの英雄が蘇った。(ベームベルリンフィル版の演奏であって、若々しい演奏でえある。熟年の頃のウィーンフィルの演奏とはまるで違う)たった2音の序奏。デプリーストの英雄は、まさに直球であって、いらぬ変化球は一つもない。じつにすっきりさわやか系である。
 まさに、勝利に向かってただひたすらにまい進する英雄の姿を見るかのようである。
中でも、絶品なのが2楽章の葬送曲。ここにはじめじめした涙は、一滴もない。掛け値なしの英雄への評価がある。それは実に厳しいものなのだ。
今日の、このすばらしい演奏を聴いてしまったあと、明日のベルリンフィルが心配になってしまう・・・・今日よりすばらしい演奏?どんな演奏なのか.
 アンコールは、モーツアルトのディベルティメントk.136 第1楽章であったが、弦楽5部全員で奏でるディベルティメントは、低音がぐっと迫ってくる、初めて聴く音色でびっくりした。やわらかい感じが出てきてこれもなかなか「おつ」であった。
 最後に、今日面白い場面を垣間見たのでご報告。普段、指揮者はソロを担当した演奏家やそれぞれのパートごとに、演奏後立たせて賛辞を贈る。しかし、それは弦楽器以外の話。いつも弦楽器は、その他もろもろで一緒に立つばかりである。しかし、今日のデプリーストはビオラから、チェロ、第2ヴァイオリン、第1ヴァイオリン、コントラバスとそれぞれ順にたたせたではありませんか。これにはびっくり。演奏家たちも、これにはやや戸惑っていた様子。いや、じつに粋な計らいであった。
 何か、ホカホカした気持ちになって会場を後にした・・・・