冬の日の幻想♪

チャイコフスキー交響曲第1番である。この曲をはじめて聴いたのは、かなり昔のN響アワーであった。たまたまビデオで録画していたので、この曲を聴くときはビデオを見なければならなかった。しかし、そのビデオテープも引越しの際にどこかへ行ってしまった。
それから、この今日の感動を求めて何枚かのCDを購入したが、いつも期待はずれに終わっていた。今日やっと、あの演奏にまためぐり会えた。山野楽器でCDを発見。指揮キリル・コンドラシン NHK交響楽団の演奏だ。1980年1月のその演奏は、実にすばらしい。
冬のこの時期に聴くこの曲はまた格別である。チャイコフスキー交響曲では、この曲をいつも別格として聴いている。チャイコフスキーはこの曲を完成させるために、過労で倒れたり、酷評されて改定したりとかなり苦労していたという。若き日のチャイコフスキーのまさに青春の蹉跌ともいえる作品であるからこそ、後期の円熟した作品とは別に価値ある作品だと思っている。コンドラシンはロシアを1978年末に亡命し、1年4ヶ月で心臓病で急死しているが、この演奏は、その間の来日演奏会での貴重な録音である。
「冬の日の幻想」という表題は1楽章に作曲者自身がつけたというが、同じく「陰気な土地、霧の土地」と題した2楽章のカンタービレの演奏では、体制に反発し亡命したコンドラシンも祖国の風土を懐かしく思い出しているかのような哀愁を感じる。最終楽章のコーダで完全燃焼するかのような力のこもった演奏は、他に聴けない名演奏だと思う。今日はいい宝物を発見した。