読了 団士郎『家族の練習問題−木陰の物語ー』

家族の練習問題―木陰の物語

家族の練習問題―木陰の物語

児童相談所知的障害者厚生相談所の心理職、職員相談所のカウンセラー、家族療法室のセラピストとして30年に渡って関わってきた様々な家族から得たエピソードを元に、なんと筆者自身による漫画を介してメッセージが伝えられる。
これを読んで、家族や人間関係において我々が当たり前と思っていることが、じつはお思い違いではないかと気づかされる。
最初に出てくるのは道に迷った人の話である。どこか知らないところへ小さな旅をした旅人が、道に迷う。その時あなたはどうしますか?当然近くの人に道を尋ねるであろう。さて、ではその訪ね方は次のどちらですか?「迷ったのですが、**へ行くにはどうすればよいのですか?」または「道に迷ったのですが、どうして迷ったのでしょうか?」
カウンセリングをしていると、悩みを持つ人は後者の質問を投げかけるとのことである。「いったいうちの子はどうしてこうなってしまったのでしょう?」と・・・そんなたとえ話から入る筆者の筆致は、その他のエピソードそれぞれ誠に明快である。
読み進めながら、「なるほどそうだな・・・今まで勘違いしていたなぁ」と気づかされることが多い。教えられる本ではなく、気づかされる本であった。