読了

松尾スズキ『クワエットルームへようこそ』(文学界7月号)
これも今回の芥川賞を逃した作品である。選評には「言葉に速度と力感があり、人物の描き沸けと場面の作りに鮮やかさを認めなつつも、あまりに騒然としていて焦点が定めにくかった」(黒井千次)「・・・入院患者の一人ひとりが巧みに描かれ、しかも根底に書き手の愛情のようなものが確かに存在していると感じて受賞作に推した。」(宮本輝)とあったが、自分も人物描写と作者の深い人間愛に感動した。ただ、表現の中にはやや世俗的過ぎやしないかと思う箇所や、登場人物が多すぎて、それらの人物が精神病院に入っている方々であるので、上手く整理できないまま読み終わってしまった。ただ、読後に抱いたさっぱりした感覚は捨てがたい。面白さの中に奥深いものがあり「アクタガワシ・・・」位まであげてよいかなと思った。なかなかいい線いっていると思う。次の作品を楽しみにしたい。