読了

西村賢太「どうせ死ぬ身の一踊り」(群像9月号)
これも芥川賞に落選した作品である。冒頭から無名の文学者への変質的な執着が描かれ続け、主人公の暴力的な退廃的生活を背景に、読み手の気持ちを下方へと引き摺り下ろしていく私小説。道を外れた人間でありながらも、大きく逸れることも出来ず、同棲する女性へ暴力を振るう程度のやくざな人間像に、現代社会に多くはびこりつつある病的な精神性を垣間見た。しかし、主人公の思いが十分説明されていないので、何を伝えようとしているのかが明確にならないまま読み終わり消化不良という読後感だけが残ってしまった。残念・・・