近代美術館へ

いや・・・実に暑い日でした。
こんな日は家にいると、どろどろ溶けてしまいそう。
ふと月初めの第1日曜日は近代美術館の無料観覧日と思い出し竹橋へ。
昨日から「所蔵作品展 近代日本の美術」前期が開催されているというのでいそいそと出かける。
4階から順に観て廻り、大好きな作品はさておき「おや!これいいなぁ〜」と思う作品を何点か発見。
川瀬巴水 東京十二題「木場の夕暮れ」「深川上の橋」
どちらも、巴水の版画の魅力が出ている作品で、どちらも下町の夕景を描いている。その、日が沈もうとする
空の茜色と、夜空の青が微妙に入り混じってなんとも言えない風情を感じる作品である。
まさに、空調のない時代の夕涼み・・・川からいい風が流れてくるようだ
◆山口華楊「耕牛」
大きな画面いっぱいに描かれた耕牛・・・その大きな体と優しい目。浅い水の中に立つ牛は、見ている者を
静かに見返している。ああ、ゆっくりと時間が流れる中、見るものと見られるもの同士だけの世界がある・・・って感じ
小磯良平「娘子関を征く」戦争画である。しかし、その画面に描かれている兵士は、まさに人間である。
バックに描かれる中国ならではの風景、その断崖絶壁を見ながら、兵士たちは物資を運ぶ馬の通り過ぎるのを見ている。
彼らはきっと、これからどこまで行くのか、故国がどんどん遠ざかっていく不安に苛まれつつ、またこの戦いが
いつまで続くのかという不安定な気持ちを抱いているのだろう。補給物資を運ぶ馬を見つめる彼らの目が、そう語っていた。
じっと見れば見るほど、小磯ならではの淡い色づかいのこの作品が反戦画に見えてくる。
加山又造「春秋波濤」遠くから見ると大きな山の形が3つ屏風の中にある。実に印象的な構図だ。その山に桜と紅葉が
これ以上無い艶やかさで自己主張している。周りには加山の作品によく見られる線による波が、力強く押し寄せている・・・
まさに波濤。すばらしい・・・時間を忘れて暫く眺めることとした。屏風画なのにモダン・・・加山の魅力が溢れていた。