芥川賞受賞作

今期の芥川賞受賞作を読了する。
伊藤たかみ『八月の路上に捨てる』(文芸春秋9月特別号)

文藝春秋 2006年 09月号 [雑誌]

文藝春秋 2006年 09月号 [雑誌]

自動販売機に飲み物を補填する仕事をもつ男女二人が、それぞれの離婚に至る
経緯を背景に結婚について語るという作品であった。
どこにでもありそうな離婚の事情は、それぞれの生き方そのものであって、結婚観に多様性が見られる
今日であれば、それぞれの離婚観があるのも当然かと思った。
古めかしい夫唱婦随的な結婚観が消えつつある現代だから、今までとは違って安直な離婚も多くなるのか
とも思った。
我慢をしても一緒にいるべきか、人生観が違えばいっそ離婚してしまったほうがよいのか・・・
ただ、小説のテーマとしてあるなら、もう少し結婚とは何か、離婚とは何かについて主人公たちに
語らせて欲しかった。読み終えても、どうも問題提起で終わってしまっているようであった。
ただ、ニートやフリーターにしか就けない若者が、結婚という契約に半分縛られあえぐ姿から、現代社会を
背景にした若者の結婚観が見え隠れしていたのは評価できるかな・・・

同誌には 保坂正康連続対談『昭和の戦争七つの真実』が面白かった。
対米戦争を回避できたのは、いつの時点であったのか。日中戦争の中にいた一兵士の声。大将級の軍人それぞれの品格。
当時の各国戦争指導者の力量についてなど、なかなか面白い視点で太平洋戦争を回顧している。
初めて知ることが多く、大変参考になった。