芥川賞候補作読み比べ

今期も芥川賞の候補作品を読み比べようと図書館より借りてきて読んだ。
『生きてるだけで、愛』本谷有希子(新潮6月号)
鬱病の女性の苦しみ悶え、のた打ち回る生活を、周りとの接点から掘り起こす作品であった。
同棲するおとなしい男が主人公の鬱に耐え、涙ぐましいほどにつくす姿と、鬱で自分をコントロールできないで
苦しむ主人公がそこにいるが、どちらも前向きな思考が欠落し読んでいるだけでフラストレーションが溜まった。
直接鬱にかかった人を知らないが、ここに描かれる主人公のような生き方にはさせたくないなと思った。
最後まで何の方向性も見出せないままに終わるので、陰鬱で、どうしようもないほどの暗闇だ。
価値が見出せないことを前提に一歩前進しろ・・・というのがニーチェの強さのニヒリズムだったようだが
自分は、残念ながらこの作品から鬱の様態しか知りえなかったようで空しくなってしまった・・・