読了 島田荘司『ロシア幽霊軍艦事件』ロシア幽霊軍艦事件作者: 島田荘司出版社/メーカー: 原書房発売日: 2001/10メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (9件) を見る

ロシア革命で処刑されたロマノフ王家の生き残りかと言われる伝説のアナスタシアと
日本の箱根芦ノ湖に突如現れた軍艦の関連を、時に史実に基づきながら謎解きする。
アナスタシアが生き残っていたかどうかは、今も謎が残るというが、実際に名乗りを
上げ裁判まで起きている人物も実際にいたとのこと。(知らなかった・・・)
この事実をもとに物語が展開するわけだが、歴史的な背景があって実にリアルな展開と
なっている。
島田荘司の知性がきらりと光る読み応え。
読み進めながら、どこまで本当でどこまでがフィクションなのかわからなくなるのが
すごい。
小説に登場する気になる項目を調べながら読んでいくと、さらにリアリティが出てくる。
ドルニエ教授の発明品もそのひとつだが、インターネットで調べると写真まで出てくるし
アナスタシアの事件や本人の写真ももしかりである。
後半には、読んでいるだけで気分が滅入ってしまうようなアナスタシアの不幸な体験
が描かれているが、それがあってこそ読者がこの物語から多くのことを学ぶことも出来る。
実に読み応えのある本であった。
アナスタシア伝説は小川洋子氏も『貴婦人Aの蘇生』という作品で触れているらしいので
今度読んでみようと思う。