ベト7♪

東京芸術劇場シリーズ「作曲家の肖像」Vol.63 <ベートーヴェン
東京芸術劇場 指揮:飯守泰次郎 ピアノ:青柳晋
ベートーヴェン
序曲「レオノーレ」 第3番 作品72b
ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 「皇帝」 作品73
交響曲第7番 イ長調 作品92
無くしたチケットだったが、電話をしたお陰で受付ですんなり代わりの
チケットを受け取ることが出来た。
席は1階最前列のやや左。今日はピアノ協奏曲があるので、丁度ピアニストの
指さばきもはっきり見える好席である・・・と思ってたのだが・・・・
1曲目のレオノーレ3番で真っ先に感じたのは、都響の弦の良さでした。
今日のコンサートマスターは矢部さん。一糸乱れぬコーダは迫力満点。
時にオーケストラの中には譜面を大きな音を立ててめくるのを見受けるが、都響はそんなことはない。
目の前で見ていても譜面のめくる音は一切聞こえない。これもこだわりなのかなぁと
思いながら鑑賞。そういえば、レオノーレの3番をオーケストラで聴くのは実に久々。
以外にメジャーにもかかわらず、演目に無いような気もする。
途中トランペットのファンファーレは、楽屋裏で響かせるが、その音量や効果も良かった。
2曲目の皇帝では、目の前にスタンウェイが用意され演奏が始まったが、1番前の席では
ピアノの音が高いところから聴こえるので、いつもとは違って聴こえる。どうも音自体が
硬質で、うまくこちらの耳まで響きの余韻が伝わってこないような感じだった。
ピアニストは、お父さんが商社に勤めていたこともあってニカラグアで生まれたという
青柳氏、若くてなかなかのイケメンである。イケメンだから厳しい評価ということもないが
1楽章の前半には結構ミスタッチが目立ち、1楽章全体がどうも硬い演奏に終始したように
思える。プロフィールでは幼少の頃からオーケストラと競演しているし、様々なピアノコンクール
で優秀な成績を残しているのだから、あがっているわけでもないのだろうが、どうも伸びやかさ
に欠ける感があった。ようやくカデンツァの辺りに持ち前の表現力が出始め、2楽章では
時々グレン・グールドのように唸り声を出しながらゆったりとした演奏となってきた。
この皇帝の2楽章は、本当にいい曲であり、弦がゆったりと奏でる場面が多いので贔屓目に
見てしまうのかもしれないが、やっと自分らしく弾け始めたように見えた。
3楽章は、ピアノとオーケストラの絶妙なタイミングで高揚感をあふれさせながら終えた。
ただ、青柳氏の弾き方で全体的に感じたのは、やや唐突と思えるよな強い弾きかたが随所に
あったこと。聴き手にとっては「おっ、この音強く弾くのか」と意外性を感じる場所で
強く弾くのが印象に残った。この辺りは聴き手の側にもいろいろな感じ方があると思うのだが
自分としては、少し驚きだった。
さて、3曲目は交響曲7番。「のだめ」をDVDに焼いて繰り返し見ているので、テレビでの
演奏との違いがはっきりとしているというのが第一印象。
じつのところ、今日の指揮者飯守氏の指揮振りはやや苦手なので、過大な期待をしないように
なんて失礼なことを思っていた。しかし、この7番は実にエネルギッシュで緊張感を最後まで
持続させた好演だったことを正直に認めよう。2楽章の重々しさの中にある気高さも良かったが
なにより最終楽章の迫力は、最近聴いたベト7の中で1番だったと思う。テンポも実に速く
速いからと言って決して軽くはない、緊迫感と迫ってくるような力強さがあった。
演奏後の拍手も、聴き手の満足感を表すものだったに違いない。
のだめのベト7も、映像と話の延長線上で聴くからそれなりに感動するのだが、音楽だけで
心を動かす演奏は、かくあるべきだという感想を持ちつつ会場を後にした。