読了 荻原浩『押入れのちよ』押入れのちよ作者: 荻原浩出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/05/19メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (62件) を見る

小説新潮」「小説すばる」等で発表された作品が集められている。
荻原流のペーソスを効かせた文体で、死後の世界や、人殺しなどを
描いた作品ばかりである。
表題の「押入れのちよ」は、運の悪い若者が引っ越した先で
「ちよ」という名の幽霊に出会い、戸惑いながらも「ちよ」から
さまざまなことを学んでいくという話。
不気味な話にならず、面白さの中に不思議に愛着を感じてしまう
幽霊話は、さすが荻原の持ち味と感心。
他に寝たきりになった義父に、復讐を企てる悪妻の話や、殺人を
犯して、その事後処理を突然の訪問者に邪魔をされ続ける話など
どれもが面白い。
現実と非現実をさまよいながら、過去と現在という時間軸を通して
描かれているので、短編ながらじつに深い味わいがあった。