読了 瀬川 晶司『泣き虫しょったんの奇跡』 泣き虫しょったんの奇跡 サラリーマンから将棋のプロへ作者: 瀬川晶司出版社/メーカー: 講談社発売日: 2006/04/21メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (22件) を見る

将棋のプロの道を挫折しながらも、閉鎖的な将棋の世界の門戸を開かせ
プロへ再挑戦した瀬川プロの格闘記である。
将棋のプロへの道は、奨励会という養成機関に入り26歳までに4段を獲得する。その門戸は
狭く年間に2度の挑戦で各回2人しか4段へはあがることができないという。
小学校の頃に将棋の面白さに目覚めた瀬川少年が、近所のライバルとともに切磋琢磨し
奨励会へ入りながらも、26歳という壁にぶち当たり挫折をする。
奨励会からの脱退を余儀なくされる若者は星の数ほどいるということだ。挫折した者の道は
アマとして将棋を極めるか、二度と将棋を指さないかのどちらかになる厳しい世界。
中学生の頃から奨励会で将棋付けになった若者には、就職の道も厳しいものとなる。
実に厳しい世界だ。
プロへの道を断念する瀬川青年が、その現実の厳しさの中に苦しみつつ、アマとして
再出発をし、将棋の面白さに再度惹かれながらアマの頂点に立つ。奨励会からの道以外に
プロへの道はない将棋の世界に、周りに後押しされながら嘆願し、将棋界に改革の風を吹きこむ
瀬川青年の真摯な姿には頭が下がる思いがした。
世の中を見れば、若いときに刹那の快楽に道を誤る多くの若者がいる。また、既成の学校システムに
馴染まず、悲鳴をあげて苦しんでいる若者も多い。その若者が、時がたち新たな目的を持ったときに
再出発をするチャンスや受け入れる環境は、どの時点でもあるべきであろうし、規制の学校システム
以外に社会へ羽ばたける道も保障していくべきであろう。
自分の進むべき道を見出せるよう彼らを支援し、再出発を保障する世の中になれば、またそのような
紆余曲折の人生を自然に受け入れる社会であればなあ・・・などということを、この本を読みながら
改めて考えた。