読了 原 寮 『私が殺した少女』私が殺した少女 (ハヤカワ文庫JA)作者: 原りょう出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1996/04/01メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 94回この商品を含むブログ (77件) を見る

『愚か者・・』ですっかり気に入ったハードボイルド作品。探偵沢崎
の気の利いた台詞を堪能できた。そして、作品の展開の面白さに
引き込まれてしまった。
自分が誘拐事件の身代金を運ぶ役にさせられてしまうとは露知らず
依頼先へ訪問する場面から始まる。
誘拐事件に潜んだ、様々な人間模様が独特の筆致で描かれている。
今回読んでいて気がついたが、原 寮 氏の情景、場面の表現力は実に
鋭い。既成の概念で表現されることなく、細かな細部や一見見落としがちな
ところをうまく表現している。
丁寧に丁寧に読んでいくとさらに味わい深く読めるのだろうが、この先の
展開が気になって読み進めてしまったのが正直なところだ。きっと2度も
3度も楽しめるに違いない。
先日、ミステリー作品を紹介している本をぱらぱら
眺めていたら、「***を読んでいない人は幸せである、なぜならこれから読むことが
できるから。すでに読んでしまった人も幸せである。***を読み返せるのだから」
(***という書名は忘れたが)というような表現があった。
まさにその心境である。
さて、本書の題名であるが、読む前にかなり気になっていた。いったいどんな意味なのか?
しかして、読了後本を閉じ表紙の題名を見て「んん・・・なるほど」と合点がいった。
そんな題名をつける作者も憎い。沢崎のぽつりとつぶやく憎い台詞のようであった。