読了 黒川博行『カウント・プラン』カウント・プラン作者: 黒川博行出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/11メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (4件) を見る

96年に本作で第四九回日本推理作家協会賞を受賞したという。「カウント・プラン」を
含め前編の短編が収録されている。
「カウントプラン」では、登場人物に目に入るものを数えなければいられないという「計算症」
の青年がいる。今、仕事の関係で視覚障害聴覚障害など一般に障害者という範疇ではない
学習障害高機能自閉症などに関わっているので、この計算症についても関心をもって読ん
でいった。
登場する青年は節分の日には節分の豆を数え、ビールを飲めば空いたカンを数え、ビンの中
の薬の数を数える。店でマッチを見てしまうとマッチの頭を数えずにはいられなくなり、
店を飛び出し逃げる。
強迫神経症とは、強迫観念を主として、強迫行為を伴うものらしく、強迫行為の内容は、
自分でもつまらないこととわかっていても、打ち消せないというものらしい。
強迫観念の中には、自分が行った行為に対してさえ、見落とし、誤りが無かったか確信を
持つことがでない「疑惑症」や、物事の原因、理由を詮索しないではいられない「詮索症」
というのもあるらしい。
普段我々にも時々気になっていることもあるが、それが強く出てきてしまうと強迫神経症
というのだそうだ。
もし、この症状に悩まされていたとしたら・・・周りの人から理解されず、悪くすれば偏見
を持たれたり症状に振り回されてしまう自分に嫌気がさしたり、相当苦しいのだろう。
さて、この作品についての感想だが、他の作品では薬物依存、ゴミ蒐集癖など一風変わった
性癖の若者が出てくる同様の作品と、純然たるミステリーものが混在していて、それぞれが
面白く読み味わえる。
ただ、起承転結という話の展開ではなく、突然意表をついた展開に発展する作品があるため
「あれ?今までの内容との関連はどうなってしまったのか?」と混乱させられた複雑な感想
も持った。
月刊誌への掲載作品であって紙数が限られていたためなのかとも思うが、内容の面白さが
あるゆえにその点が
やや残念であった。