読了6 真保裕一『トライアル』トライアル作者: 真保裕一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1998/07メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る

競輪、競艇オートレース、競馬を題材にした短編集。作者名と題名をみて
この本を手にしたので読み始めて驚いた。真保氏の取り上げるテーマにこれらの
題材が選ばれていたことにである。どうも、ギャンブルというと赤鉛筆を耳に
専門新聞を見入っているおじさんのイメージが強かったのだが、この本を読んで
特殊な世界に生きる選手たちの心情や、プロフェッショナルとしての誇りを知る
ことができた。
それぞれの話には、不正や家族との関係を通して葛藤や焦燥にあえぐ人間ドラマが
描かれている。この世界についての取材を綿密にしているようで、読みながらこの世界
について様々なことを知ることができたのも良かった。
素人的には、競馬は馬を介するが、他の競技は人間が主役なので不正も多いのでは
と漠然と考えていたが、対戦相手を直前まで決定しないとか、外部との連絡を遮断する
とか、持ち込まれる機材の入念なチェックなどが講じられているのだということもわかり
ギャンブルとして成立するために様々な手段が講じられていることも良くわかった。
特殊な世界を描いていても、根底にあるテーマは人間の心情であり、読み手をひきつけて
やまない真保氏の書きっぷりに読後の満足感も十分であった。