読了14 遠藤周作『わたしが・捨てた・女』わたしが棄てた女 (講談社文庫)作者: 遠藤周作出版社/メーカー: 講談社発売日: 1972/12/15メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 70回この商品を含むブログ (66件) を見る

一人の男が女をもてあそぶ、女は運命を大きく変えていく。男はどんな男も
していることと思いながらも、女の生き様の変容に自己弁護を繰り返す。
捨てられた女は一途に男を思い、運命にもてあそばれながらに人間愛に昇華させていく。
どこでもある話でありながら、この二人の生きようを追うことで人間の善と悪を
とことん追求していく。漱石が『こころ』で描き、太宰が『人間失格』で描いた
テーマを遠藤周作は、自身の思い悩む唯心論と汎神論をこの二人に投影させる。
女はめぐりめぐりハンセン氏病に苦しむ人々の中に入り、愛に生きることを
自らが選択する。
一見幸せに見えることが幸せなのか、貧しく、醜くありながらもあるがままに
善く生きることが幸せなのか。主人公の二人の生きかたが問うてくる。
重く、哀しい結末を読み、しばし自らの生き方に煩悶する。