読了16 浅田次郎『日輪の遺産』日輪の遺産 (講談社文庫)作者: 浅田次郎,北上次郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1997/07/14メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 9回この商品を含むブログ (41件) を見る

浅田次郎の描く戦時中の物語が好きだ。この本は戦争終結寸前に
終戦後の日本復興のためにマッカーサーから奪った財宝を隠すという物語である。
現代と戦時中を行きかいながら、秘密作戦の進行とその財宝をめぐる
人々の心境が実に克明に描かれ、読み手を物語りに引き込んでいく勢いが
ある。財宝をめぐる展開は『シエラザード』でも堪能させてもらったが
架空の話であってもなお、浅田次郎の描く戦時中の現実味を帯びた話に
気持ちがぐっと引き込まれる。戦争末期の混乱と、国会でも話題の
埋蔵金の話は、不思議なロマンを感じてしまうのはなぜだろうか・・・
あとがきでは、極道を描くイメージが定着してしまった作者が、その
イメージ払拭のために描いたとあり、作者自身は文章の稚拙さを認めつつも
この作品に思い入れを感じておられるようだった。
自分もこの作品に多少の荒削りさを漢字ながらも、かえって新鮮に読むことが
できたように思う。最後の展開には驚きがあるのでぜひご一読をお勧めしたい。