読了43恒川 光太郎 『夜市』夜市作者: 恒川光太郎出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/10/26メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 96回この商品を含むブログ (203件) を見る

第12回日本ホラー小説大賞受賞作。
幼いころ夜市に迷い込んだ主人公、弟と引き換えに「野球選手の才能」を手に入れた。
罪悪感にさいなまれた主人公が、青年になり弟を取り戻そうと夜市へ再び入るのが
年を経た市場で弟と再会できるか・・・不思議な物語である。
出てくる妖怪や摩訶不思議な世界であっても、どことなく懐かしく感じられる。
昔々・・・と始まる昔話が、自然に耳に入ってくるように、この物語もすぅっと
体に入ってくるような感じだ。
実は、夜市も良かったのだが、もうひとつ収録されている「風の古道」の方に
妙に引き込まれた。小学生の頃芥川龍之介の「トロッコ」を読んだ時に感じた
のと同じ感覚だった。自分の知らない世界に迷い込んでしまうという、怖いのと
いつかきっとそんな時が来るんだという不確かな予感が同居したような感覚。
幼い頃に感じた感覚を思い起こしたのもあって、印象に残った作品であった。
たまには、こんな世界を覗くのもなかなか乙である。