読了51 多島 斗志之『不思議島不思議島 (創元推理文庫)作者: 多島斗志之出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 2006/05/27メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (34件) を見る

面白い探偵小説の条件のひとつに読み手を現実の世界から小説で設定された空間に誘うことにあるという。そのため絶海の孤島や閉ざされた社会が舞台になることも多い。本作においても、かつての村上水軍の本拠地であったという瀬戸内海の島を舞台とし、昔の言い伝えをストーリーの背景に据え、最初から読む手を別世界へ導いてくれる。また、主人公を取り巻く人間関係も古くから生活を共にしてきた島の人々である。そこに、外の世界から飛び込んできた人物により、主人公の過去の事件に絡んだ謎が少しずつ解明され、最後には大どんでん返しが待っている。ということから、小説本来の面白さの条件を整えている作品なのだが、自分にとってはもうひとつ乗り切れない部分があったのは残念だった。直木賞候補ともなったという作品であるので、自分の読み方が浅いのかも知れないが、本作の根幹をなす重要な秘密については、後半になってようやく読者に情報が知らされたのは、前半で与えられた場面設定からの推理がかなわないということに気づいてしらけたのは確かである。しかし、どんでん返しの驚きはかなりあって、その点については満足したのだが・・・・ふに