読了52→改め53 テネシー・ウィリアムズ『ガラスの動物園』ガラスの動物園 (新潮文庫)作者: テネシーウィリアムズ,Tennessee Williams,小田島雄志出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1988/03メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 41回この商品を含むブログ (43件) を見る

テネシー・ウィリアムズといえば『欲望という名の電車』を思い起こすが、本作で描かれるのは
南北戦争での負組になった南部の人々の過去へのノスタルジーと現実の生活である。
昔の栄華が心の支えとなっている母親と体の障害を持ち内気になってしまう娘、そんな二人が
いるために自由に羽ばたけない若者の3人を巡るひとつの事件が描かれる。
およそ、今の自分とは無縁な時代背景、場面設定ではあっても3人それぞれの会話
心の動きには不思議と共有できるものがある。
「昔は良かったね」と思う気持ちを持ち続ける母親、コンプレックスから前向きに考える
ことをやめてしまっている娘、現実にがんじがらめになっていても自棄にもなれない青年の
葛藤は、万人共通のものだからだろう。
本作はかなり昔に書かれているのだが、舞台の設定や背景、細かな演出が実に現代的で
演出が書かれている部分からステージを想像しながら読むことで、まるで本物の劇を見ている
かのような気分になれるのも本作の愉しみのひとつにもなっている。
戯曲をたまに読むのもなかなか面白い・・・・