彷徨える老人

職場に一人の老人がやってきた。どうも話を聞くと、朝早く散歩に出たが
家に帰ってみると家人が鍵をかけて出かけてしまったとのこと。いつもの
場所に鍵が無い老人は困り果てて、孫を探しに炎天下彷徨っていたようである。
断片的にしかわからない情報をより集めて、いろいろ調べ、ようやく
家人に連絡を取り、家まで送っていく。
5年前に妻を亡くし、息子が山形から呼び寄せてくれたが、まだ土地勘が無いのだろう。
家の近所まで来ると、やっと元気を出していたが、年をとって物忘れがひどくなる
恐怖をこのお年よりは感じていたのだろう。何度も頭を下げるお年寄りに
自分の老後を見るようで、身につまされるような思いであった。
ちなみに孫については何年生かわからないと話していたが、結局高校2年生だった。
家人が出払った家で、夕方まで部屋にひとりと聞いた。生まれ故郷から知らない町
へきて、日がな部屋にいるお年寄り・・しかし、夕方、家人よりお礼の連絡があり
なかなか優しいお嫁さんであったのがせめてもの救いであった。