読了81 『有栖川の朝』有栖川の朝 (文春文庫)作者: 久世光彦出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/01/10メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (4件) を見る

プロデューサーとして「寺内貫太郎一家」「時間ですよ」などを手がけた
久世光彦の作品だけあって、じつに面白かった。一昔前有栖川宮の名を語って
世間を騒がせた事件を題材にした作品であるが、実際の事件とは登場する人物は
異なり、人間味あふれる個性が見事に描かれる。
犯罪ぎりぎりであることを承知の上で、宮中絵巻を再現して世間を欺くという
ロマンに駆り立てられた老女を中心に、売れない大部屋役者、ねじは緩んでいても
美人の3人が、時間をかけて一世一代の大嘘披露宴を準備していく過程の
人間模様は、愉快で切ない。完全犯罪よりもロマンがあるお騒がせ事件に
知らず知らずに3人を応援している自分は、4人目の片棒を担いでいたの
かもしれない。そこが久世氏の演出の上手さなのだなぁと実感。