読了82 『16歳の教科書』ドラゴン桜公式副読本 16歳の教科書~なぜ学び、なにを学ぶのか~作者: 7人の特別講義プロジェクト,金田一秀穂,鍵本 聡,高濱 正伸,大西 泰斗,竹内 薫,藤原 和博,石井 裕之,モーニング編集部出版社/メーカー: 講談社発売日: 2007/06/21メディア: 新書購入: 15人 クリック: 86回この商品を含むブログ (74件) を見る

なぜ人は学ぶのか?この問いに対する答えは様々である。どれも「なるほど」と
思い、どの答えも間違っていないように思えるが、「そうだったのか」と納得する
には至らない。いつもこの問いに立ち戻ってしまう。
この本は、知り合いに薦められて読んでみたが、今までになかった答えのいくつか
を見出すことが出来た。高校生向きに書かれた本であるが、ある意味新鮮であった。
その中で、国語を学ぶとはどういうことかについて語る金田一秀穂氏からは
他教科と違い国語が話せて理解しているのを前提とした、もうすでにある程度習得
している点で、国語で学ぶべきものについて示唆に富んだ意見が印象的であった。
言葉で表現することの多様性を知り、的確に相手に伝えるコミュニケーション能力
を育むことに力点を置いているように思えた。気持ちを表現する言葉の多用で
あたかも言葉に長けているような印象を持ちがちだが、より的確に伝えることが
まずもって大事であるという点にも頷けた。
一枚の絵を、見ていない人にいかに伝えることができるか。これこそ国語力で
大切にしなければいけないことであることにあらためて気づかされた。
日本語は英語と違って、微妙なニュアンスを含んでいる言語であるともいう。
「彼は私に日本語を教えました」という表現が多言語での表現であるが、日本語
では「彼は私に日本語を教えてくれました」という表現となる。「してくれました」
とはあらためて考えれば相手を慮る、なんとも素敵な言い回しではないか。
これを自然と使い分けている日本語の良さに気づかされた。
「なぜ学ぶのか」の問いに対して、教科それぞれにもつ特徴によって答えは違って
しかるべしであり、それぞれの特質を熟知していなければ答えもなかなか出まい。
そんな視点が得られただけでも、この本は自分にとって価値あるものとなった。
「なぜ学ぶのか」の答えをあれこれ考える前に、一度この問いの本質について
考えておくことも大切であると感じた。この本は、受験生だけでなく、大人も
読んでみる価値があろうと思った次第である。