読了85 松浦寿輝 『花腐し』花腐し (講談社文庫)作者: 松浦寿輝出版社/メーカー: 講談社発売日: 2005/06/15メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 6回この商品を含むブログ (33件) を見る

友人に騙されて地上げ屋のような仕事を任されながら、出て行って欲しい相手に
軽くあしらわれ、成り行きで一緒に酒を酌み交わす。何とも風変わりな設定だが
追い出されようとしている男もまた、ゴルフ会員権売買で1億者借金を背負う男。
お互いに上手くいかない人生を、それぞれの語り口で「生きるとは」を語るが
なるほどと気づかされることも多く。人生上手くいかないほうが哲学者になれる
ものだとあらためて思う。芥川賞受賞作である。
いいとこの生まれで、何不自由なく暮らして才能を発揮できているのは、メンデル
スゾーンぐらいのものか・・・長生きは出来なかったが。
「借金背負って、スリル満点で生きる方が面白い」なんて台詞、なかなか言えない。
題名の「花腐し」とは万葉集の中の一句らしい。卯の花も腐ってしまうような雨
そういえばこの話、雨の描写だけでなく、話自体じめじめと湿っぽいテーマで、まさに
花腐しである。それなのに共感できるところが多いのも、作者の筆遣いなるものか・・