読了94 古処誠二『接近』接近 (新潮文庫)作者: 古処誠二出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2006/07/28メディア: 文庫 クリック: 14回この商品を含むブログ (27件) を見る

昭和20年4月の沖縄戦における凄惨な戦いを一少年を通して見る。そこには
敵国アメリカで日本に同化する訓練を受けた二世が二人おり、彼らとの関わり
の中で、日本の将兵の生き様に疑問を抱いていく。
随所に見られる悲惨な戦時下の状況はよく調べられており、沖縄の人々が
米兵と日本兵の中にあっていかに苦しい状況にあったが良くわかる。
物語のはじめに二世の米兵が登場してから、誰がスパイなのか最後までわからない
でいるのが、かえって緊張感を持続させていた。
沖縄の人にとっての沖縄戦を考えさせられた作品となった。
文章はめまぐるしく視点をかえるためなかなか読みづらいが、読み進めざるを得ない
不思議なエネルギーを感じた。
作者は1970年生まれであり、戦争を知らない世代であるにもかかわらず
沖縄戦についてここまで詳細に描いていることにも驚いた。