三日月少年

読了112 長野まゆみ『三日月少年漂流記』

博物館に飾られていた三日月少年がいなくなった。じつは、充電式ニッカド電池で動く精巧
な自動人形の三日月少年は、電池を入れられ自分の意志で逃走したのだった。
電池を仕掛けた「水蓮」という少年と友人の「銅貨」は三日月少年が何処へ行くのかを見届けに
「家出」を決行する。デパートやプラネタリウムに飾られた他の三日月少年にも電池を入れ、
その動向から各地から秘密裏に集合する三日月少年達の目的を突き止めようとする。
長野まゆみの初期作品であるが、旧字体を駆使した流麗場文体はさすがである。
少年たちの冒険はどことなくノスタルジックで、不思議を不思議と感じさせないところが
不思議である。
たまには、このようなファンタジー、幻想作品も面白い。少年の頃、芥川の「トロッコ」に
不思議に共感していた自分を思い出す・・・