読了115 高橋克彦『前世の記憶』前世の記憶作者: 高橋克彦出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1996/02メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (3件) を見る

タイトルが面白そうで図書館から借りてきた。高橋克彦氏は直木賞作家だが
推理小説江戸川乱歩賞をもらたっり、吉川英治賞をもらったりと実に多彩で、
今回の作品も、それらの賞とは一味違った切り口のものである。
『オール読み物』で94年から95年にかけて書いた「記憶」をモチーフにした
短編集である。昔の記憶は断片的なピースで、知らぬ間に自分の思い違いで隙間
を埋めているような気がする。本書にはそんな、忘れかけていた記憶を呼び起こす
くすぐったいような感覚が描かれている。
さて、自分の一番古い記憶は?と考えたが、幼稚園の頃が一番古そうだ。
年少の時に好きだった「よしこ」ちゃんのお母さんに、母が「うちの子が好きだって」
と言っているのを聞いて赤くなってしまったこと。「とんび」の歌を教わって暫くしてから
空を見ていてとんびを見つけ歌い始めたら、先生も一緒に歌ってくれたこと。
濡れた砂は手でたたくと表面に水が溜まってくるのを発見して得意顔で友達に教えたこと。
いや、幼稚園に初めて行ったときに、先生預けれらるの嫌がってないたこと。あの時は
もう母親と遭えなくなるのではないかと思ったのが一番古い記憶だろうか?
記憶を題材にした本書には、他人の過去でありながらなぜか懐かしさを感じるのも
不思議だ。今日図書館に行ったら、高橋氏には『蒼い記憶』という著書もあることを
知った。いずれまた読んでみようと思う。