読了 江川 晴『麻酔科医』麻酔科医作者: 江川晴出版社/メーカー: 小学館発売日: 2008/06メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 2回この商品を含むブログ (2件) を見る

自分は大病をしたことも、手術をしたこともない。だから麻酔科医が
どんな仕事なのかもまったくわからないでいた。この本では主人公は
麻酔科医である。花形といわれる外科から蔑まれるような場面も描かれ
ていたが、仕事の中身からいえば医療の中では重要な、要のような存在で
あることがよくわかった。
読んでいて一番驚いたのが、手術で全身麻酔では筋弛緩剤併用する場合も多く
その時には呼吸も止まるという。筋弛緩剤は筋肉を弛緩させ手術をやりやすく
するための処置らしいが知らなかった。
日本で始めて麻酔を使ったといわれる華岡青洲は「チョウセンアサガオ
を原料に全身麻酔を作ったと記憶しているが、中国では大麻をはるか昔
から使っていたそうだ。後漢末期、華佗という人物が麻酔を使い、手術を行
ったと『三國志』に記録されているのは別として、青洲は、西洋でウィリアム
モートンエーテル麻酔下手術に成功した1846年より約40前に成功していることが
記録に残っている手術の最古参らしい。これもすごいことだ・・・。
いつか手術されることもあるかもしれないが、呼吸がとまるなんて知ってしまって
恐くなった。
さて、本題に戻るが作者は慶応大学で看護士をされていた1924年生まれの女性作家
である。平易な文体であるが、高齢を感じさせない現代感覚には読後に年齢を知って
驚いた。主人公や周りの人々の語り口の端々に、高齢さ故の生真面目さが見え隠れ
し、昔の人の感覚を感じさせるが、主人公のさわやかな真面目さとしてうまく表現
できているようにも思えた。
なかなか面白い読み物でであった。