読響 幻想


東京芸術劇場
指揮:ヴァシリー・シナイスキー
チェロ:タチアナ・ヴァシリエヴァ
◆デュカス/交響詩魔法使いの弟子
サン=サーンス/チェロ協奏曲第1番
ベルリオーズ幻想交響曲
今日の演奏会はとても印象に残るいい演奏会であった。
指揮者のシナイスキーは、小泉と一緒にカラヤン国際指揮者コンクールで
優勝した指揮者であり、チェロのヴァシリエヴァロストロポーヴィッチ
国際チェロ子コンクールの優勝者であるという実力者の演奏会でもあった。
まず、好感が持てるのはこの二人から感じられる人間性にもあった。
ヴァシリエヴァはサン・サーンスの演奏、これもさすが実力派だけに
冒頭の主題の旋律の迫力はすばらしかったが・・・が終わったあとにも
じつに控えめなしぐさで好感が持てた。2回目のカーテンコールには
バッハの無伴奏1番のプレリュードをあっさり弾きこなし、聴衆の拍手に
応えて下がっていく姿は印象に強く残った。本当の実力をこれ見よがしに
しないところが最近の独奏者にはなく楚々としていて感じがよかった。
シナイスキーの指揮も緩急をうまくつけながらダイナミックな迫力を感じる
演奏であり、特に幻想での鬼気迫る1楽章、4楽章、5楽章と2楽章の
華やかなワルツ、3楽章の静寂とさまざまな表現を駆使し、この曲の持ち味を
十分に出していた。
中でも、初めて聞いたが4楽章を楽譜どおりに繰り返して演奏したのには
驚いた。手持ちの幻想交響曲では繰り返しが省略されていたが、実際ティンパニ
の行進曲風のリズムの繰り返しを聴いて、これもなかなかいいなと感じさせてくれた。
(録音ではノリントンが4楽章を繰り返しているのは確認できた)
調べてみると、1楽章の繰り返しを行う指揮者もいるようだが、今回の演奏では
1楽章は繰り返していなかったように思う・・・
いい演奏を聴いたなぁと余韻を楽しみながら、有楽町線で銀座1丁目まで行き
丸善に寄り帰途へ・・・じつにすばらしく、想い出に残る楽しい一日となった。