モーツアルトのピアノソナタ1

今回はモーツアルトピアノソナタを順番に聴いていこうと決め、早速1番から・・・
◆ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 K. 279

ピアノ:リブ・グラーセル(1・2番)
いくつか聴き比べたがグラーセルの演奏はリズムの変化があって、やや単純明快な
1番のソナタを面白くしているようだ。
モーツアルトピアノソナタを書き始めたのは19歳という。それまで作品を書いていなかったのは
第1にモーツアルトピアノ曲を即興で演奏していて書き留める必要感をあまり感じていなかった
という理由があるらしい。そして作曲の意欲を喚起させたのは同じ頃ピアノフォルテが出始めたという
ことらしい。1774年12月父とともにミュンヘンを訪れた時にフォルテピアノという新しい鍵盤楽器
出会ったのだそうだ。モーツァルトはその優れた楽器の持つ表現力と未知の可能性に関心を抱き、
デルニッツ男爵の依頼に応え一気に6曲のピアノソナタを書き上げた。
これが作品1〜6のデルニッツ・ソナタ集である。
その第1曲目は実に快活なメロディーで躍動感にあふれている。特に魅力的なのは3楽章で
モーツアルトらしい主題がテンポよく流れる。
◆ピアノ・ソナタ第2番 ヘ長調 K. 280
さすがモーツアルトで、1番では手探りではじめたようなういういしさを感じられたピアノソナタ
2番では早速持ち前の好奇心が発揮され、こんなこともできるぞとばかりに、右手の主題に呼応するように
左手で低音を力強く印象的に鳴らすなど、楽しみながら曲を作っているように感じられる作品である。
2楽章は静かな湖畔の夜を思い浮かべるようなしっとりとしたメロディが美しい。3楽章は緩急、間のとり方
など思うが侭にメロディが紡がれている舞曲風の曲。1番より自由度が強く感じられ面白い。
◆ピアノ・ソナタ第3番 変ロ長調 K. 281
ピアノ:ヴラド・ペルルミュテール(3・4番)

出だしから華麗で古典的な主題が印象的。しかしハイドン風の1,2楽章から一転モーツアルトらしい
主題と変奏風の主題そして、また突然短調風になったりととめまぐるしく変化を見せる3楽章。
◆ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 K. 282
全18曲のピアノソナタのほとんどが1楽章をアレグロとなっているのに、この曲はアダージョから
始まる。しっとりとした出だしの後に2楽章ではメヌエットとなんとも不思議な構成になっている。
やっと3楽章になって踊るような主題がいききと表現される。実験的な作品か・・・
◆ピアノ・ソナタ第5番 ト長調 K. 283
ピアノ:ゲザ・ルッカ

デルニッツ・ソナタ6曲の中では1番秀逸な曲ではないだろうか。1楽章の主題の変化は絶妙で
モーツアルトらしさが十分楽しめる。2楽章の品の良さはじつに魅力的である。3楽章のプレストは
先々の展開が予想できないわくわくするような旋律の嵐である。ゲザ・ルッカーの演奏にはこの曲の
魅力が引き出されている生き生きとした演奏だ。
◆ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調 K. 284
ピアノ:リブ・グラーセル

1楽章の主題はどこかで聴いたような?4手のソナタの曲にあったような気がする・・・・
冒頭から躍動的な主題に圧倒される。この曲も聴き手をひきつける魅力を十分に備えている。
じつはこの曲がそもそもデルニッツ男爵に当てて書かれた曲らしいのだが、モーツアルトはいたく気に入って
演奏旅行先でもよく弾いていたらしい。3楽章は演奏時間14分程度かかる6曲の連作の最後を飾る壮大な作品である。